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国際協力と開発期間の短縮、そして低コスト化のために、この技術を導入したのだ。
もしも日本に製造技術がなかったら、多少のコストと時間はかかっても、自主開発ということになっていただろう。
もう一つ、HIHAの第二段は、デルタⅢの第二段とおなじものである。
共通化によってコストを抑えると同時に、他国のロケット開発と協力関係をつくるのだ。
ようするにHIH開発の目標は、カネがかかっても国産技術一〇〇パーセントだったのだが、HIHAの目標は、もしも日本が、HIHAの開発においてコスト度外視で国産化をすすめていたら、世界から異端児扱いされ、つまはじきをされただろう。
宇宙産業とは、そういうものなのである。
半減した打ち上げコスト話はそれるが、宇宙関係のある会合で、「HIHロケット開発の評価」における「国際協力」の項目で、〝ゼロ″という評価をした人がいた。
HIHの開発は、国際協力にまったく貢献していなかった、というのである。
しかしこの意見は、ほとんど〝常識はずれ″といってよい。
なぜなら、HIHは〝全段自主技術による開発″が目的のロケットだった。
したがって開発と平行し、自主技術を身につけることも目的だったのである。
もしも自主技術がない、あるいは基本的な技術力が劣るために他国から技術を導入したのであれば、それは〝国際協力″とは呼ばない。
〝技術援助を受ける″とか、〝支援してもらう″という。
そして相手国に、その支援に対する見返りを提供しなければならない。
その場合、たとえ表向きは〝国際協力″であっても、中身はテクノロジーの売買であり、商取引にはかならない。
れる。
しかしこの場合、共同で開発にあたる国と国との技術力は、対等か、それにちかいものでなければならない。
さもないと、いずれかの国が〝下請け″になってしまう。
国際協同という名のもとにすすめられてきた旅客機の開発などで、日本の航空機メーカーがボーイング社の下請けになっていたのは、まさにこの関係である。
なんでもかんでも他の国々といっしょにやれば国際協力になると思っているのは、あまりにも稚拙な発想であり、的はずれもはなはだしい。
自主技術のない国が〝国際協力″に参加しても、それはただの足手まといだ。
自主技術というのは、国際協力をすすめるうえでは、参加条件であると同時に大きなバーゲニング・パワーなのだ。
したがって、HIHの開発をつうじて自主技術を身につけたからこそ、HIHAでは参入をのぞむアメリカ企業も受け入れられたのである。
そして日本は開発期間の短縮によるコストダウンを、アメリカ企業は技術移転による利益を手にした。
技術の世界の国際協力とは、そういうものである。
ともかくこうした技術導入をふくめ、形状の変更や構造の簡素化、そしてマンパワーの縮小により、HIHAの打ち上げコストは八十五億円以下になった。
言葉をかえれば、ロケット開発の時代からロケット製造の時代に入ったということだろう。
とりつけられる。
輸送能力もHIHと同等で、低軌道へ十トン、静止トランスファー軌道へ四トン、そして静止軌道へは二トンとなる。
いわゆる「静止二トン級」だ。
ある。
標準型に「液体ロケット・ブースター(LRB)」を取り付けて、輸送能力をアップしたのが〝増強型″だ。
たロケットである。
しかもエンジンは、標準型につかわれているメイン・エンジンのLE17ちがうのは、先端部にちょっとかわった形のノーズコーンがつくだけである。
ようするにLRBは、標準型の第一段ロケットの基本設計はそのままにして、ノーズコーンとエンジン部を新規に設計したものなのだ。
したがってLRBの比推力は、標準型・第一段とまったくおなじ四百四十秒。
推力はエンジンが二つになるので、標準型・第一段のちょうど倍の百七十六トン。
いっぽう燃焼時間は、二つのエンジンによって推進薬を消費するので、標準型・第一段の五〇パーセント、つまり百秒である。
額面どおりというか、ひじょうにシンプルでわかりやすい。
このLRBを装着した増強型HIHAの輸送能力は、低軌道へ十八トン、静止トランスファー軌道へ七・五トン、そして静止軌道へは三・三トンとなる。
いわゆる「静止三トン級」のロケットだ。
さらに将来において、より大きな輸送能力が求められた場合は、二基のLRBを装着することも計画されている。
その場合、低軌道へは二十三トン、静止トランスファー軌道へは九・五トン、静止軌道へは四トン以上の「静止四トン級」ロケットとなる。
そもそもロケットというのは、リフト・オフから大気圏を抜けて高々度に到達するまで、空気抵抗と重力にさからって上昇するので、非常に大きな力を必要とする。
だからこの鋳域を担当する第一段は、全長の三分の二を占めるほどの大きなロケットでなければならないし、大気圏を抜けるまでの低空の領域では、固体ロケット・ブースターも必要になる。
しかし高々度にあがってしまえば、状況はがらりとかわる。
高度二〇〇キロぐらいでは、空気抵抗はまったくない。
そのため人工衛星などを軌道に投入するための第二段ロケットは、第一段よりもずっと小さい。
こういう関係になっているので、たとえば搭載能力一トンのロケットを二トン級にするためには、第一段を増強しなければならない。
しかし第一段というのは、低空の空気密度が高いところを上昇するので、増強のために大型化すれば重くなるし、空気抵抗も大きくなる。
その重さをささえ、かつ空気抵抗にうち勝つために、そうとうのエネルギーを費やさなければならない。
だから静止二トン級のHIHA標準型を三トン級の増強型にするためには、大きなLRBが必要になる。
しかしこれも、HIHAロケットそのものが軽量だからできることだし、その原型であるHケットを利用してLRBを作ることなどできないし、その組み合わせだけで増強型にすることも不可能だろう。
一基取り付けた静止三トン級で四百五トン。
そして二基のLRBを装着した静止四トン級でも、約五百二十トンである。
いっぽうHIHとほぼ同程度の静止二トン級でありながら、本体重量が倍ちかい四百八十トンだったアリアンⅣ44Lは、部分的な変更によって増強型を作ることはできなかった。
ESAがとった方法は、アリアンⅤの新規開発である。
アリアンⅤは、HIHAの静止三トン級よりも少し輸送能力の高いロケットである。
しかし本体重量は、七百二十五トンにもなる。
そしてなにより、ロケットの開発費というのは、新規の場合は機体価格の五倍以上になるとされる4乗せしたため百九十億円という数字だった。
しかしそれゆえに、部分的な変更だけでHIHAの静止二トン級や静止三トン級を、そして将来の大型化へむけての静止四トン級にも対応できる道を拓いたのだ。
「あまりに高くて、国際的な打ち上げビジネスで競争力をもてない」と決めつけるまえに、こうした背景に目を向けないと、全体像は見えないだろう。
世の中のニーズというのは、どんどん変化するものである。
自家用車といえばセダンしか知らなかった日本人が、週休二日制の浸透とバブル崩壊による〝安近短″をきっかけにして、RV車という新しいカテゴリーへ走ったように、社会の状況とともにニーズは確実に変化している。
宇宙開発でもそれはおなじことである。
一般に人工衛星といえば、その多くは放送衛星や気象衛星だ。
つまり高度三六〇〇〇キロの静止軌道を、地球の自転と同期して周回する衛星である。

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